アンケート「野外音楽フェスティバルでのメガネ型ディスプレイ字幕の評価」
聴覚障害当事者(大阪)の方にご協力いただき、野外音楽フェスティバルにおけるメガネ型ディスプレイによる字幕サービスについて、アンケートを実施しました。このアンケートを広く共有することで、これまでほとんど障害のある人たちへのサービスを導入してこなかった野外イベントへの検討材料となり、さらにはメガネ型ディスプレイを提供するベンダーへの今後の開発材料になれば幸いです。
調査概要
◉ 調査対象事業
事業名称:Beyond Music Festival(通称:ビヨフェス)
開催日時:2022年11月3日(木・祝) 13時00分〜17時00分
実施場所:服部緑地野外音楽堂(大阪府)
天候:晴れ
◉ 字幕表示方法
字幕種類:遠隔リアルタイム字幕(沖縄)
字幕表示端末1:メガネ型ディスプレイ(EPSON MOVERIO BT-30C×3台、BT-40S×3台)
字幕表示端末2:参加者各自のスマートフォン、タブレット(ipad)
◉ モニター
対象:大阪在住の聴覚障害当事者、ほか
回答数:8名
調査方法:アンケートフォームへの入力
調査内容:聞こえの特性について、メガネ型ディスプレイについて、遠隔リアルタイム字幕について、野外音楽フェスに参加した感想
実施期間:2022年11月3日〜7日まで
実施者:一般社団法人日本障害者舞台芸術協働機構
◉ 考察
聞こえのレベルはさまざまではあるものの、字幕があることで「なんとなく歌(歌詞)が聞き取れる」人がいることがわかりました(今回のアンケート結果では71.4%)。口元が見えれば歌(歌詞)が聞き取れる人(28.6%)、字幕と口元が見えれば歌(歌詞)が聞き取れるという人(14.3%)もいました。当事者にとって字幕や口元が見えるということは、ただ単に情報保障というだけではなく、音楽そのものを感じてもらうための支援になっていることがアンケート結果から推測できました。
メガネ型ディスプレイの「よかったこと」として寄せられた意見では、「隣の人と手話を使って話す時に舞台から目線がそれるが、字幕メガネの字幕は常に目の前にあるので、手話で話しながら歌詞が見えるところ」など、舞台から目線を外して隣の人と会話している間も字幕が見えることを評価している回答が多くありました。「よくなかったこと」として寄せられてた意見では、「重い」とう意見が多くありました。そのほか、メガネ、マスク、補聴器による耳への負担が大きくて疲れた、太陽光の下では文字が見えにくい、という意見もありました。
ユニークなところでは、「一緒に踊ったりしようとすると、メガネがずれてしまう」という意見もありました。字幕があることでフェスを楽しんでいただけた一方、リズムに乗るとメガネがズレて字幕が見えなくなるという問題があることに気づきました。
様々な意見はあるものの、全体的にメガネ型ディスプレイの評価は高く、また、今後の期待値も高いことがわかりました。
メガネ型ディスプレイについて
よかったこと(その1) 8 件の回答
- 文字がクリアに見れて、生の舞台との焦点は気にならなかった。大きさもちょうど良かった。
- 歌ってるときに歌詞がわかるため、歌の内容を耳で聞き取れるようになった
- 隣の人と手話を使って話すときに舞台から目線がそれるが、字幕メガネの字幕は常に目の前にあるので、手話で話しながら、歌詞が見えるところ。
- 歌詞が字幕で理解出来ること
- グループで、歌う人が変わるときは、名前が表示されること
- 歌詞がわかると、飽きることなく見られると思いました。
- 字幕を読みながら見たい場面の箇所を同時に見れるのがよかった。
- 舞台で一番見たいところに視線を合わせながら、話している内容を確認できる
よかったこと(その2) 6件の回答
- 隣の人とお話ししたりするときも、文字が見える。休憩するとき、字幕メガネを外しても首にかける紐がついているので、手を動かしやすかった。手話で話せたし、飲み物も飲めた。
- グループの内、誰が歌っているかが分かるように名前が表示されているところ。
- 曲に対する思い、説明などが字幕で伝わってきたこと
- 横を向いても字幕が見えること
- 雰囲気で知るのではなく、なぜ盛り上がってるのか?なぜみんなが振り付けを練習してるのか? などが逐一わかるのは、本当によかった。
- 知らない歌詞を事前に確認できること
よかったこと(その3) 4 件の回答
- 手話通訳を見逃しても文字で確認できた。
- MCや挨拶の文字化が嬉しい。
- 観客との一体感を少し感じ取れた。
- 手話だと、前方など見やすい席が限られるが、字幕メガネだと全体が見やすい後ろの席からでも見える。
- 会場の雰囲気を見ながら、字幕が読めること
- 隣の人としゃべるときにも字幕は見えているので、目の端で字幕が見えていてよかった。
よかったこと(その4) 3 件の回答
- 晴天の屋外は、光が強すぎて文字は薄かったけど、そんなに気にならない。
- 夕方になるにつれて文字がクリアに見れた。
- スマホのバッテリー消耗を気にしなくて済む
- 歌詞の合間(間奏)のトークも楽しめたこと
よかったこと(その5) 1 件の回答
- 観客に話しかけてる内容が新鮮で楽しかったし、歌詞と振りに繋がってることも発見できた。
- ある曲(女性ソロの3曲目かな?)は、歌詞に感動して涙出そうになった。また聴きたい。
よくなかったこと(その1) 8 件の回答
- 今どこ歌ってるのか全然わからなくて、聴こえる人に確認したら、3列目が今!と言うが、なかなか掴めなくて、3番目の歌手の声がわかりやすかったから注意して聴くと、歌い出だしから4〜8テンポ(1〜2小節分)後に、字幕が出たということがわかった。
- 先に文字を出して欲しい。歌い終わったら消えてもいい。リズム(速さ)がわかるので、出だしを掴めたら、今ここかな?と追いかけて、マッチ出来ることがある。
- MCや挨拶は、話してからの文字化で良い。3列残しても問題ないし、ありがたい。
- 歌ってるときの歌詞(字幕)の表示のタイミングが分かりづらい。2~3行表示されるときに、歌いはじめの歌詞は1番上に表示してほしい。
- 字幕が消えるのが何回かあったこと。
- 日差しが眩しくて字幕が見にくい(日の当たらない席がいい)
- 重くて、鼻と耳タブがつかれる
- どうしても重さ、わずらわしさは拭えなかったです。それでも昔に比べると随分軽量化したとは思います。致し方ない、とはよく理解しています。
- バッテリー消耗が早く歌ってる途中で切れたこともあり。
- 野外ステージだと太陽光が邪魔して見えづらいケースがある
よくなかったこと(その2) 7 件の回答
- 最初かけた時のメガネは、少し下にズレやすくズレたら文字が見えなくなる。支えがいる。(頭部に調整できる紐をつけるといいかなぁ?)
- 交代したとき、こめかみの位置がマッチングして、文字が良くみえた。また少し顔を上げると、メガネ越しにならなくなるので、隣の人と話がしやすかった。
- 歌手にあわせて見るときに歌手の衣装が白だったら、字幕が読みづらくなる
- 文字行が3行は多い。2行が適しているのでは。
- 重くて鼻の上が疲れる。端末はネックストラップでかけるのではなく、膝に置く方が楽
- 一緒に踊ったりしようとすると、メガネがずれてしまう
- 歌の時に、やはりタイムラグがあったこと。ほんの少し早いくらいがちょうどいいとの声がありました。
- 普段から見れる視野が更に狭くなる
よくなかったこと(その3) 6 件の回答
- かけた時重たい、こめかみが疲れるが、入れ替わりや休憩タイムがあるので、目を休ませることができた。
- 手拍子など、手をあげたりすると、メガネがずれるため、字幕もずれてしまう
- 通信速度の関係かタイミングが遅い時があったように思う。
- 歌詞のどの部分を歌ってるか? わかりにくい
- 歌い終わった歌詞はすぐに消して欲しい。歌っている歌詞がどれかわかりづらい
- 使用スマホのバッテリーの問題で時々止まるときがあった
よくなかったこと(その4) 4 件の回答
- 場所は良かったが、口元が見えない(どこのコンサートもそうだが)ので、今どこを歌ってるのか確認しずらい。
- 歌詞がわかっても、今どの部分?とか、歌の長さがあるので。指差しが欲しいなぁと思いました。
- 長く見ると目が疲れる、耳の上が痛くなる
- やっぱり重い。時々誰かに譲っていたからまだ良かったものの。
- 歌い始めてから、歌詞を出すのではなく、歌い始める前に歌詞を出して欲しい
- サビの始まりに字幕がない状態なので、一緒に乗れない
よくなかったこと(その5) 3 件の回答
- 観客の声を知らなかった。たまたま聞こえる人が手話通訳してくれてて、「前にいる人がカマキリがいるよって言ってた」「歌手同士が抱き合ったりすると、キャーキャー言ってる」「手話で自己紹介すると、すごーい!って盛り上がってたよ」など。
- 近くに手話通訳が欲しいかも…と思いました。
- 手拍子をしたり、リズムに乗って体を動かすと、字幕が揺れ動くので、気持ち悪くなるところ。
- 暑いとバッテリーが上がりやすい。よく切れてしまった。
野外音楽フェス(ビヨフェス)に参加された感想などをお聞かせください
ご意見・ご感想 7 件の回答(抜粋版)
- 自己紹介で、手話を使ってくれたのがとても嬉しくなりました。ファンになりそうです!
- 挨拶の手話通訳とても良かったです。バックが黒と黄色なので、手話通訳の服も黒と黄色で、最初、出て来たこと気づきにくかったです。
- いろんな特徴の違うグループで、とても楽しめました!
- 久しぶりに音楽を楽しめました!
- 普段コンサート行かないので、こういった生でしか得られないMCのやりとりなど、楽しいことがあるんだなぁ!と思いました。ありがとうございました!
- 手話通訳者がついたのはありがたかったけど、場所が遠いため、手話が読みづらい。
- せめて、近くで見たかった。
- あと大きなモニター(ハイビジョン)を用意して、そのモニターに映像を出して、歌詞の字幕がつくようにしてほしい。その方がメガネよりは見やすいです。
- 歌手の方ご自身の名前を手話で挨拶されていたところが印象に残りました。聞こえる方からの後談で、気付いたのですが、「キャ〜」や「うぉ〜」みたいな反応が結構あったようで、そこのあたりの情報が可視化されると、より一体感を感じ、皆の反応も楽しめることが出来るんだろうなと思いました。
- 本番に向けて、これまでたくさんの準備大変だったと思います。文化の日を一緒に過ごせたこと、ありがとうございました!
- 字幕は誤変換少なかったのは良かったけど、タイムラグが発生していたように思う。歌詞が分かっても、どこを歌ってるかわからない。舞台上にスクリーン表示が望ましいけど、費用面で 難しい場合、全ての歌詞を舞台上に表示(紙で掲示もOK)し、通訳者が歌ってる部分をなぞっていく方法でもいいかも。
- 何人かのアーティストが自己紹介を手話で表してくれたのは嬉しかった。聞こえる人も手話に興味を持ちやすくなると思う。聞こえるアーティストや聞こえる客だけのためでなく、聞こえない客をもっと増やしたければ、聞こえないアーティストも出演させたら、もっと良いと思う。聞こえる、聞こえないアーティストや客が当たり前のように入り混じるコンサートになればいいなと思いました。
- 普段こういった音楽フェスティバルに行かないので、新鮮な気分でした。
- メガネ型ディスプレイで、全くないよりは楽しめる。でも100%ではないかなという感じでした。歌手や歌の特性によって、人の声が楽器に消されてしまうので、せっかくの字幕がどこかわからず、字幕が追えない。
- 最後の2組は楽器がシンプルで、ソロボーカルだったので、聞き取りやすいかったです。
- 席の位置は今回は後ろでしたが、歌手の口も読みたいなというのもあり、もう少し前に座れないだろうか。そのあたりもまた次回のトライアルに期待しています。
- 今回は聴者で参加させていただきありがとうございました。でも聞こえるからこその着眼点もあったように思います。特に、アイドルが手話で自己紹介した時に、どよめきがあったことを伝えると、「そういう情報は知りたい!」と言ってました。難しいとは思いますが、(どよめき)とか(歓声)などがあると、臨場感や雰囲気まで伝わると思いました。
- やはり歌詞の表示に少しタイムラグを感じました。行の表示がまだまだ遅い様に感じます。
- カラオケの様にどこを歌っているか色付けで分かる様になればいいのですが、そこまで行かな くても行のどこを歌っているか色分けして見える様にしてほしいなと思いました。
- 手話通訳の位置が遠かった。少し広い野外ステージで席が遠かったためか、手話通訳だけでな く壇上の人が手話を使う場面をもう少し近くで見られなかったのが残念だった。
- メガネ型ディスプレイ字幕の方に気を取られると、視野は普段より更に狭くなるので見落としがちになる。舞台を近くで見れるモニターもある方がありがたかったなと感じました。