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アンケート調査報告「視覚障害のある若者たちの鑑賞・観戦状況とニーズ」

視覚支援学校(大阪府)に通う学生ならびに視覚障害のある教員にご協力いただき、音楽・映画・舞台・スポーツの4つのジャンルの鑑賞・観戦状況とニーズについて、アンケート調査を実施しました。このアンケート調査を広く共有することで、誰もが文化芸術に触れてることのできる機会創出に少しでも繋がれば幸いです。

調査概要

対象:視覚支援学校(大阪府)の生徒ならびに視覚障害のある教員
回答数:35件
調査方法:郵送法
調査内容:1「ご自身について」、2「音楽鑑賞について」、3「映画鑑賞について」、4「舞台芸術鑑賞について」、5「スポーツ観戦について」
実施期間:2021年6月
実施者:一般社団法人日本障害者舞台芸術協働機構

考察

劇場や映画館、スタジアムで鑑賞・観戦すると答えた人は「ライブやコンサートに行ったことがある」45.7%「映画を映画館で鑑賞する」63.3%「演劇やミュージカル、バレエ、ダンス、歌舞伎などの舞台芸術を鑑賞する」20.6%「スタジアムや競技場などで観戦する」31.8%という結果でした。最も低い数値だったのは、舞台芸術鑑賞でした。

劇場や映画館、スタジアムに「行かない/行けない理由はなんですか?」という質問に対して、4つ全てのジャンルで「いくまでが不安」「ついてからが不安」と回答した人が多くいました。視覚に障害のある若者にとっては、お金や時間がないという理由よりも「いくまでが不安」「ついてからが不安」という理由が劇場や映画館、スタジアムに行かない/行けない要因になっている可能性が高いことがうかがえました。


劇場や映画館、スタジアムに「あればいい視覚障害をサポートするサービス」の上位は「最寄駅から客席までのガイド」「音声ガイド」「会場内での点字ブロック」「映像を手元のタブレットで見る」でした。これは非常に興味深い結果でした。これまで視覚に障害のある人へのサービスといえば、音声や触覚による情報サービスがほとんどでした。しかし、今回のアンケート調査の結果から、それらのサービスとは別に「自分にとって見えやすくなるように補うサービス」を求める声があることがわかりました。

※映画鑑賞に関するアンケートでは、「映像を手元のタブレットで見る」選択肢はありませんでした。

私たちは、”見えない「盲」と、見えにくい「弱視=Low vision」、視力障害以外の視野狭窄といった見え方の障害を含めた総称が「視覚障害」”であるということを理解していながら、サービスを提供する際には、知らず知らずのうちに「盲」の方を対象としたサービスに偏っていたのかもしれません。

アンケート調査に協力してくれたみなさんの中には、普段からスマートフォンを活用してYouTubeを見る人もいれば、テレビやタブレットで映画を鑑賞しているという人もたくさんいました。しかし、彼らに「劇場の客席から舞台の様子が見えますか」とたずねると「見えない」と答えます。「見えない」という声に対する鑑賞サービスは、音声ガイドやタッチツアーだけじゃないのかもしれません。

アンケート調査によって、私たちは改めて視覚障害を正しく理解しなければならないと感じました。視覚障害のある人も参加できる環境をつくっていくためには、視覚障害のある人たちのニーズに耳を傾けながら不断の実践を続けて行くしかありません。なぜなら、この過程こそが対話と協働という共生だからです。

一般社団法人日本障害者舞台芸術協働機構
代表理事 南部充央

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