Topics

特集一覧

  1. HOME
  2. ブログ
  3. ブログ
  4. 字幕デザインの新たな役割――マンガからのインスピレーション

字幕デザインの新たな役割――マンガからのインスピレーション

この度、木ノ下歌舞伎「摂州合邦辻」の字幕デザインに携わらせていただくことになりました。本来、字幕はアクセシビリティの向上を目指すものですが、私がつくる今回の字幕は、音響や照明と同じく、作品の想像を支援する役割を担うことができればと考えています。字幕は、耳が聞こえない・聞こえにくい人にとって演劇や舞台作品の臨場感を引き立てる重要な要素です。今回の字幕では、ただ単にセリフを表示するだけでなく、演出や雰囲気を伝えるためのツールとして活用したいと思っています。

制作作業に取り掛かる前に、聴覚障害者の方々と意見交換する機会を得ました。その場でサンプル字幕をご覧いただき、みなさんから様々な意見を聞くことができました。より想像力を支援する字幕を作るために、私が提案したトピックは「マンガ」でした。

マンガは、私にとっても音のない世界です。その音のない世界で、読者に作品の意図をより伝えやすくするための工夫がたくさん盛り込まれています。もちろん、絵でわかりやすく伝えるという方法があります。これは演劇においては俳優の演技力にあたるのでしょうか。そのほかの工夫にフォントがあります。

字幕では、可読性や判別性といった機能的な役割がフォント選びの優先事項だと考えられます。しかし、フォントには心理的な効果も存在します。この心理的な効果とは、フォントが私たちに与える印象のことです。例えば、ゴシック体と明朝体では、異なる印象を与えるとされています。ゴシック体は「モダンで力強く、カジュアルな」印象を与える一方、明朝体は「フォーマルで高級、上品な」印象を与えます。さらに、丸ゴシック体は「柔らかくて可愛らしく、優しい」印象を与え、筆書き書体は「和風で粋、伝統的な」印象を持たせます。

さらに、マンガでは「描き文字」が非常に効果的に使われています。マンガの描き文字は、擬音語や擬態語を表現する他、人物の心象や場の雰囲気など絵では表現しきれない情報を読者に伝える目的で使われています。読者は、描き文字を「文字」ではなく「絵」として認識しているそうです。

この話をしたとき、聴覚障害のある方たちからも「そうか! マンガは聞こえる人にとっても音のない世界なんだ」という反響をいただきました。

今回の字幕は、マンガから得たアイデアを取り入れています。マンガが持つ豊かな表現力を活かし、字幕を通じて視覚的に情報を効果的に伝えることを目指しています。文字と絵が融合した表現方法が、作品の魅力を深く理解することにつながることを願っています。

関連記事